宮廷の画家 ヴィジェ=ルブラン
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2013年2月25日に金沢市の佐々木 慶一様が『宮廷の画家 ヴィジェ=ルブラン』を自費出版されました。
本著の刊行は、公立法人から助成を受けて、2013年に筆者が東京で行った研究発表会の資料として作成したものを、出版したことに始まる。内容には、筆者の修士論文を再編集して起用した。稚拙論文であり、より多くのことを筆者は今後も調査してゆかなければならないが、自らの研究結果として、公表することを試みた。
著作内容/
エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン(1755-1842年)はフランス王妃マリー=アントワネットに重用されて、王妃の肖像画家として活躍したが、1789年のフランス革命による影響から、イタリアやオーストリア、ロシアそしてドイツへと、およそ12年間の亡命生活を強いられた。晩年に、ヴィジェは自身の記憶をまとめて『回想録』を刊行。現在まで、この著作はヴィジェ=ルブラン研究の最重要資料となっている。本論文で筆者は、ヴィジェが亡命先であるイタリア半島のナポリ王国において描いたナポリ皇太子フランセスコの肖像画について考察した。ヴィジェは、アントワネットの姉であったナポリ王妃マリア=カロリーナに画家として起用された後に、ナポリ宮廷において王妃や王女たち、そして皇太子フランセスコの肖像画を制作した。『回想録』によると、ヴィジェはナポリ王女たちの肖像画を描くために宮廷へ呼ばれた。その後に、依頼主である王妃が、オーストリア皇帝フランツ2世とナポリ王女テレーザの結婚の儀に際して不在となった、とある暑い日差しの季節に、ヴィジェは《皇太子フランセスコ》を描いたのだ、という。画中で皇太子フランセスコは、ナポリ近郊のヴィスヴィオ火山を背にして、緋色の上着を纏い、ナポリ王家を表す青色の肩掛けと、母方のオーストリア王家を表す緋色の肩掛けを、胸にはナポリ王の証であるサン・フェルディナンドの勲章と、ナポリの守護聖人サン・ジャンヴィエールの勲章、そしてヨーロッパの覇者たる地位を示す金羊毛騎士団の勲章を身に着けており、左手で地図に記された国名「オーストリア」を指示している。本論文では、この絵に描かれた諸要素を検証することによって、《皇太子フランセスコ》にはナポリとオーストリアの両国間にあった、当時の複雑な国際関係が暗に示されているということを筆者は明らかにした。
サイズ | A5版 |
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製本タイプ | ソフトカバー |
発行年月日 | 2013年02月25日 初版発行 |
ページ数 | 108 |
著者 | 佐々木 慶一 |
ISBNコード | 978-4-86431-151-9 |